■業態/小規模高客単価サウナ業態
■弊社業務/企画、設計、設計監理、インテリアコーディネート
■竣工日/2021/03
■エリア/神奈川県川崎市

銭湯からの建て替え~プロジェクトのはじまりについて

「終戦直後、昭和21年から代々続いた銭湯を、銭湯とは違う新しい業態の温浴施設に建て替えたい。」2016年1月、1本の電話からこのプロジェクトは始まりました。
但し、これを成功させるには乗り越えなければならない壁がいくつもありました。
・スーパー銭湯を成立させるには駐車場が十分に確保できない。
・仮に駐車場が確保できたとしても、競合を凌ぐ施設規模はとても無理。
・かといって単なる小規模施設を新築していては、収容可能人員からくる総売り上げが収支計画と合わない。
そんなことから、初めは「リスクを背負うより既存施設を改修して、様子を見てはどうか?」という考えもありました。
ですが、オーナー様の決意は固く「きっと成功する方法があるはずだ」という考えで正式に建て替えプロジェクトがスタートすることになりました。

サウナ主体の施設を目指すことに

オーナー様の思いを伺いながら、先の3つの課題を解決するために提案したのが、スーパー銭湯業態と比べると比較的客単価の高い「サウナを主とした施設」を目指すというものでした。

当時はまだ今のようなサウナブームは起こっておらず、私の過去の経験則から「いわゆる都市型サウナ・駅前型サウナ業態であれば高客単価も期待でき、収容人員が少なくてもそれなりの売り上げは確保できるかもしれない」という考えからでした。

建設費の高騰という新たな壁

しかしここで次の壁に直面することになります。
それまでの一般的なサウナ業態は、男性専用としても利用者が満足するのに必要な床面積は少なくとも400坪以上(それでも正直厳しい)は必要で、これを男女でやるには800坪以上は必要というのが一般的でした。
また、計画を進めているうちにオリンピック需要で建設費がどんどん高騰していき、その結果計画当初の想定坪単価では収まらず、予算から逆算した建設可能な規模はどんどん縮小され、最終的には延べ床面積が300坪満たない規模にて男女のサウナ業態を計画せざるを得なくなりました。
しかし高客単価の施設となれば、それなりに必要なアイテムがないとお客様は満足していただけません。
それらをいかに限られたスペースの中に落とし込むのか?それを解決するための長い「生みの苦しみ」が始まりました。

苦しみながら練りに練ったプランニング

最適な浴槽の幅や奥行きは何センチか?サウナ室の収容人員とそれに見合った浴室内休憩エリアの広さは?レストランの収容人数は何人が適正か?休憩ゾーンは?廊下幅は?等々、
出来上がったラフ図を基に検証し、だめならもう一度書き直す。
これを何度も繰り返しながら、やっとバランスの取れたプランを完成させることができました。
ゆいるを訪れたことがある人は、施設規模に対して様々なアイテムが効率よく収まっていることに驚かれると思います。
こうして1本の電話から始まったプロジェクトは、約5年の歳月をかけて2021年3月にオープンいたしました。
その後のゆいる様はおかげさまでたくさんの方に利用していただき、SNSなどでも常に高い評価をいただいている施設となりました。

最後に

私は常々、設計はお客様が利用しやすく喜んでいただける箱を作る仕事であって、決してそれだけでお客様が来てくれるものではない、そこにオーナー様が魂を吹き込むことでお客様が来ていただけるもの、と考えております。
今回のオーナー様も開業に向けて様々な施設をご覧になり、良いところを取り入れ、自分たちの思いを日々SNSで発信されるなど大変な努力をされていらっしゃいます。
それらがあって現在のゆいる様があるのだと思っています。
そんなプロジェクトに携わらせていただけましたこと、この場を借りて改めてオーナー様に謝辞を述べさせていただきたいと思います。

朝日湯 源泉ゆいるHP:https://yuiru.net/