中村望月

サウナブームと言われる今、現役設計プランナーとして最も長くサウナ業界に携わってきたアクアプランニング代表・中村敏之と、25年に渡って活動してきた最古参の温浴専門コンサルタント、アクトパス代表・望月義尚が、日本のサウナの歴史と現在のサウナブーム、そして未来をテーマに対談しました。サウナビジネスに関わっている方やサウナファンにも知っていただきたい興味深い話が続々と登場します。全8回に分けて、アクアプランニングとアクトパスのホームページでリレー方式で公開していきます。

[ 目次 ]

第1回「サウナ業態は2極化する?」

第2回「フィットネスとサウナは真逆の業態」(アクトパスサイト)

第3回「お風呂でおでんが食べられたニュージャパン」

第4回「脱衣場からいきなりサウナ室?」(アクトパスサイト)

第5回「外気浴のニーズが高まっている」

第6回「若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ」(アクトパスサイト)

第7回「ブームを終わらせないために~安全管理の課題」

第8回(最終回)「水風呂のバリエーションと、サウナブームのこれから」

第5回 外気浴のニーズが高まっている

望月) ゆいるさんの話に戻りますけど、限られたスペースの中で外気浴スペースを作った点を特に素晴らしく感じています。やはり外気浴のニーズが昔よりもかなり高まっている印象を持っているのですが、その辺は中村さんが何かお感じになることありますか。

中村) そうですね。今はきっとどこの施設も、ちょっとしたスペースがあればとにかく外気浴を作ろうって考えているじゃないですか。それは凄く良いことですよね。昔は多分そのような発想がなかったかもしれないし、「3、4人しか入れないなら作る意味があまりないよね。」というふうにしか思っていなかったかもしれないです。ゆいるに関しても、何台も椅子を置けない状況で「本当に外気浴いる?それだったら浴室広げたいな。」と考えたこともありました。しかしゆいるの社長さんが「外気浴のスペースに中庭でも作ってみせたい」っていう想いを抱いていて、そのような絵も貰ったんです。それならば小さくてもいいから外を作るっていうのはありだよね、っていうことで作ったんですよ。結果的には作って良かったですね。この間テレビで、ルーバーで全く外が見えない奥行き90センチぐらいしかないベランダを外気浴スペースとしている施設が紹介されていました。私はそのサイズでも作る価値はあると思いますね。

望月) ドシー系列の外気浴スペースも狭いところに無理やり作ってますよね。

中村) メトスのショールームもそうじゃないですか。裏に出て表から丸見えなのに、あれはあれで外気浴を楽しめますもんね。

望月) マルシンスパとかもそうです。

中村) 外の空気を味わうことができればそれで十分なんですよね。以前 星のや東京に行ったのですが、露天風呂を見てびっくりしました。通常の露天って浴槽や休憩コーナー、植え込みがあって景色が見えるじゃないですか。星のや東京の露天は6m角の浴槽しかないんですよ。東京のど真ん中だから外から見えないように高い壁に囲まれていて、空がわーっと見えるんですよね。湯上がりで外に出て少しくつろぐスペースなんて全くないんですよ。それでも外の空気は味わえるし、「これもありだな」って思ったんですよね。少しでもスペースがあるのなら外気浴は絶対に作るべきだと思いますね。

望月) ブームのはるか前からサウナに通っている人は、サウナと水風呂を往復をしている印象が強いですね。「外気浴」の認知度が高まったあたりですごいブームが来た気がしてるんです。今はかなり若い人が多いですけど、ブームの直前までは70代ぐらいの年配の方が多かったですね。コロナで来なくなってしまいましたが、私が最若手だったことが多かったです。

望月) 昔のニュージャパンのレディースサウナの露天には、足湯にテレビまでついていた。

中村) こういうところがすごいですよね。
ニュージャパンのこのサウナは天井と壁の間に隙間が開いていて、壁の後ろに空気層を作っているんです。普通は保温層があって、後ろが躯体で前が仕上げ材なんです。ここのサウナは仕上げ材の間に空気層を作って、足元から上に空気が循環していくような作りをしてるんですよね。だからすごく空気の循環も良い。「お金をかけて良いサウナを作る」というこだわりを感じられるサウナですね。多分、日本中どこを探してもないと思いますよ。

司会) かなりお金がかかるんですか?

中村) もちろん、ものすごいお金かかりますよ。手間もかかるし。

望月) 単純に、その必要性やできることを知らない、というのもありますよね。

中村) 究極的に突き詰めていかないと必要性に気づかないんですよね。有名な話ですが、ここのスチームサウナって水蒸気がかなりモクモクと出るんですよね、なぜかというと、水蒸気にわざわざ冷気を当ててるからなんです。普通は水蒸気だけでもある程度モクモク出るからいいじゃんって思いますよね。それをもっと白くしたいから冷気を当てるなんてすごい発想だなと思いますよ。

望月) 実際に蒸気量が増えるわけではない。

中村) 蒸気の量は変わらないんですけど、冷やされると透明なところが白く見える。本当に前の人が見えないぐらいモクモクって白くなるんですよ。

望月) 沸騰した瞬間の水蒸気って透明ですね。

中村) 冷えるから白くなるんですよね。その現象を取り入れているっていうのが素晴らしい。ニュージャパンの細かい工夫を探し始めたらきりがないほど沢山ありますね。本当によく考えられてますよ。しかも階段移動でしょう。ビルの中であれだけ上下に移動して、よくお客さんが嫌にならないなって思いましたね。緑を見るための階段なんて普通は作らないですよ。

第6回 「若者が知らない究極のサウナ室と、投資のメリハリ(アクトパスサイト)」に続く